Cornucopia: 角笛
世界で最も複雑で精巧なハンドペイント(細密画法)ポーセリンの1つと言われているヘレンド 社のトゥッピーニの角笛。
ヘレンド 社でもマスターペインターのみが描くことを許され、完成までに4回の焼成を重ねたとても特別な作品です。
正直、ヘレンドを知ったばかりの若かりし頃は興味もありませんでした。
いつからか、毎日沢山の磁器を手に取り、そしてその背景を学ぶようになった頃。
全く興味がなかった「シノワズリ」に深い愛着と憧れを抱くようになっていました。
欧米では「Cornucopia」と呼ばれているトゥッピーニの角笛。
「Cornucopia」には一体どういった意味があるのか。
私が思い付いたのは、「Cornucopia」と呼ばれている型のフラワーベースくらいでした。
調べてみると、「Cornucopia」にはギリシャ神話に出てくる幼い頃のゼウスに授乳をしたと伝えられるヤギのツノ、またはそのツノの装飾品という意味があり、又、もう1つには「宝庫・豊富」という意味があります。
確かに、上のフラワーベースも角や角笛を連想させる型です。
トゥッピーニの角笛のデザインは1870年代にペルシャの皇帝シャー(The Shah of Persia)に献上されたそうです。
当時のヘレンド の職人達がエナメル質に輝くアラビアの陶器に触発されたことにより誕生したと言われていますが、確かによくよくザクロ色の箇所を見ると、エナメル質風な仕上がり。
真っ白な野原の上に広がる青々としたタコイズブルー、そしてヘレンド の特徴的な鱗模様(エカイユ)で立体的にザクロ色で優美に描かれた「角笛」、贅沢に使われた金彩は正にその名に相応しいデザインだと思います。
その後、ローマの旧家「トゥッピーニ家」に親しまれたデザインとの由き来で「トゥッピーニの角笛」と命名されましたそうですが、欧米では富のシンボルでもあるヤギの角のモチーフ。現在でも、富裕層の方々のコレクターも多く、当店でもコレクターのお客様に人気のデザインです。
ショップにはコレクションとしても取り入れやすい小さなアイテムを揃えてみました。
金彩の透かし細工が入ったティーボウルも目を奪われる美しさ。
小さくて凝ったものほど集めたくなるコレクター心を刺激します。
私にはまだまだ憧れだけの存在ですが、いつの日か是非コレクションに迎えたいと思っています。
そして、このヘレンドの素晴らしいクラフトマンシップが前進しながらも末永く受け継がれることを心から願っています。
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